あかりさんの記録(その1)お問合せフォームから、一通のメッセージ
今回から、あかりさんという女性とのことを、順番に書いていこうと思う。
出会いから、会う前のやりとり、当日のこと、そのさきのことまで。かっこよく書けたらいいんだけど、たぶん無理だ。僕はいつも情けないので、そのまま情けなく書く。
最初に言っておくと、これは恋愛の話じゃない。僕はあかりさんに惚れたわけじゃないし、あかりさんも僕を好きになったわけじゃない。そういうのは、お互い一切ない。
ただ、日常じゃない時間をお互い持ち寄って、僕は好きなご奉仕で欲を満たして、あかりさんは肩の荷を下ろす。そうして、また明日から、それぞれの生活に戻っていく。そういう関係の話だ。ドライってわけでもなくて、わりとあったかい。でも、恋愛ではない。
ある夜、通知が鳴った
きっかけは、このサイトのお問合せフォームだった。
夜、だらだらスマホをいじっていたら、ぽこん、と通知が鳴った。問い合わせが来ると、僕のところにメールで届くようになっている。
正直に言うと、この瞬間、僕はいつもすごく緊張する。冷やかしかもしれないし、怒られるのかもしれないし。おそるおそる開いた。
差出人は「あかり」とだけあった。文面はこんな感じだった。
はじめまして。あかりと申します。34歳、都内で働いています。 夜中に偶然このサイトを見つけて、気づいたら全部読んでしまいました。 こんなこと問い合わせるの、すごく勇気がいったのですが…… 話を聞いてもらう、というのは、私みたいなのでもお願いできるものでしょうか。
返信を打つ手が、止まる
読み終えて、僕はしばらくスマホを持ったまま固まっていた。
嬉しい。素直に嬉しい。誰かが、僕の書いたものを最後まで読んでくれて、そのうえで勇気を出して連絡をくれた。僕みたいな変わり者のご奉仕でも、必要としてくれる人がいる。それだけで、書いててよかったな、と思う。
でも同時に、めちゃくちゃ緊張する。変な返事をして、この人を怖がらせたらどうしよう。がっついてると思われたら最悪だ。
返信を打っては消し、打っては消し、を繰り返した。40も半ばの男が、スマホの前で百回くらい書き直している。われながら、みっともない。
「私みたいなの」という一言が、ずっと引っかかっていた。この人はきっと、自分のことを後回しにしてきた人だ。そういうのは、文章からなんとなく伝わってくる。
結局、飾らない言葉しか出なかった
さんざん悩んで、結局こう返した。
あかりさん、はじめまして。メッセージ、ありがとうございます。 最後まで読んでくださったこと、それだけで本当に嬉しいです。 「私みたいなの」なんて、とんでもないです。 どんな話でも、焦らず、あかりさんのペースで聞かせてください。 よかったら、少しずつやりとりさせてもらえたら嬉しいです。
送信ボタンを押してから、あ、ちょっと嬉しさが出すぎたかな、重かったかな、とまた一人で反省会をした。
でも、嘘は書いていない。かっこつけようとしても、僕はどうせすぐボロが出る。だから、思ったことをそのまま書くしかない。
数分後、あかりさんから短い返事が来た。「返信、ありがとうございます。……なんだか、ちょっと泣きそうです」と。
その一文を見て、ああ、この人はちゃんと、吐き出したいものを抱えてるんだな、と思った。だったら、僕にできることはある。惚れたとかじゃなくて、単純に、力になれそうだ、とわくわくした。
ここから、あかりさんとのやりとりが始まった。(続く)